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最高裁判所第二小法廷 昭和23年(れ)962号 判決 1949年2月15日

主文

本件上告を棄却する。

理由

辯護人大島正義の上告趣意第一點及び第二點について。

原判決が證據とした第一審相被告人大塚寿、同高畑嘉信に對する司法警察官の各聽取書には夫々所論のような供述記載があるけれども、記録を精査すると、被告人原田益実及び原審相被告人小松孝は何れも原審公判廷で、司法警察官意見書末尾添附の犯罪表第一號の一の被害品及び數量欄を讀み聞かされ、その通り相違ないと述べて居って、そして右犯罪表第一號の一には被害金品として現金四〇〇圓と記載されている。從て原判決は右両名の供述と被害者西岡勇の提出にかかる盗難届書の記載に基いて現金四〇〇圓を窃取したものと認定したことが伺はれる。しかし、原判決舉示の右司法警察官の各聽取書及び被害者の盗難届書は、原判決が被告人の原審公判廷における窃盗の事実についての自白と綜合して、犯罪事実認定の資料としたもので、自白にかゝる窃盗の金額と前記書類記載の金額との間に多少の相違があっても、被告人の自白とそれ等の證據とを綜合して犯行自體を認定するのに亳も妨げとなるものではない。從て原判決摘示の事実は、その舉示の證據により十分之を認めることができ又前記各書類も違法に證據調の手續を經たものであるから、原判決は何等採證法則に違背した點もなく又理由に齟齬あるともいうことはできない。論旨は理由がない。(その他の判決理由は省略する。)

よって刑事訴訟法施行法第二條舊刑事訴訟法第四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山 茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎)

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